販売価格:3,150円
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数少ない上質な男性歌手の一人、矢野眞道のデビュー・アルバムが、彼の愛好するカーメン・マックレイへのトリビュート「My Portrait of Carmen」と題して完成した。日本のジャズ・ボーカル界は御存知のように女性歌手が花盛りなのに、男性歌手はベテランを除くと極めて淋しい状態が続いている折、矢野眞道の本格的なボーカル・アルバムの誕生を双手を挙げて歓迎したい。彼は1964年の10月の生まれだから、まだ46才で、現役の男性歌手の中では若い方だ。しかもプロとしてのキャリアを十分積んでいる上、1993年から2001年まで米国の大学に学び、音楽に加えて多くの学問の研鑽を重ねたので、発音が流暢な上に基本の唄についての詩と曲の理解度が抜群に高い。日本でのライブ活動は、ソロ歌手としてばかりでなく、1990年に混声コーラス・グループBreezeの発足に参加し、アメリカから帰国後の2005年には、師の後藤芳子の指導の下に、新しい3人のボーカル・ユニット「a・i」を結成して、活発な活動を展開しているのでそのファンも増えている。コーラスで歌うときに彼の声が良く通るので女性2人との混声ハーモニーが生き生きとして、グループの魅力を高めている。本アルバムは「Portrait of Carmen」のタイトルの通り、彼の尊敬するカーメン・マクレイの唄の中から、特に好きな歌曲を選んで、彼自身の独自の解釈で表現したもので、そのための共演ミュージシャンの選定にも特別の配慮がなされている。即ち彼の信頼する宮前幸弘(p)と増根哲也(b)の2人を中心として、曲によりソロからカルテットまでグループを編成しアレンジもこの2人に依頼した。勿論ヘッド・アレンジで、即興的に音を合わせたライブ感覚の曲もあるが、全曲について、ミュージシャンと十分な音楽的打ち合わせを行って録音にのぞんだ。彼、の歌唱に耳を傾けて頂きたい。瀬川昌久氏(ジャズ評論家)